bloom / AJISAI
NAOYA OHKAWA
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NAOYA OHKAWA
冬と春が過ぎて雨季に入った。突然降る大雨は、なぜかスコールと呼ばれず、ゲリラ豪雨というおそろしげな名前がついた。気候帯はゆっくりと形を変えている。
紫陽花が咲く。パラパラとした花びらの、一枚づつそれぞれ色が違って綺麗だ。けむしといもむしが、重なる花を住処に、葉を食べながら雨が止むのを待っている。紫陽花は寛大なそぶりで、薄い花びらに雫を乗せている。身を隠すようにしているけむしといもむしに、そう遠くない将来、羽が生えて飛んでいくというのが、いまいち想像できない。あの夏の夜に、街灯の周りをバタバタと粉を振りまきながら飛ぶ彼らにも、花と仲良くするなんてかわいらしい時期があったらしい。
雨が止むのを待ったり、降るのをあやしんだり、むしが羽を伸ばそうとしたり、紫陽花の景色は、夏の予感に満ちている。時期が来れば、桜のように散って川面を満たすこともなく、舞って誰かの鞄に紛れ込むこともなく枯れる。散るから綺麗なんだよと、よくわからないことを言われることもなく。言葉を手繰るのも、それはそれでまぁ問題はないが、レトリックのその先の本当のことを知りたい。ゲリラ豪雨と名前がついたのなら、それもそれでまぁ問題はないのだけれど。
あの枯れた紫陽花も、なんとも言えず絵画のようで、たまらなく綺麗だ。
夏が来る頃また、どこかの路傍で。
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