


























DRIFTER / HALMA
NAOYA OHKAWA
DRIFTER / HALMA
NAOYA OHKAWA
折り重なった松林の先、草むらを抜けたところにある海岸、風の強い寒い日だった。
ごうごうと波風の音がうるさく、松がさわぐ音や、波長をいまいち捉えきれていないラジオの音もどこかから聞こえていたのだけれど、思い返すと音もなくすごく静かな場所だった気がする。
細やかになみだつ海面が西日を反射して綺麗だった。どこまで歩いても、光の反射する道はまっすぐこちらに向かってくる。大きい猫を首輪でつないで散歩をしている人がいた。大きい猫ですね、大きい猫なんです、という確認のような会話と会釈だけをして、猫と人は向こうに歩いて行った。流木と枯れ枝を燃やして、サーファー達が暖を取る。焚き火はとても楽しそうだ、少しの時間あたらせてもらえばよかった。
映画で見た階段は、手すりが真新しく替えられていて、あのままでよかったのにと少し落胆した。はるばる来た身ではそうやって勝手なことを思うが、そういえばここで生活している人もいるのか、新しい方がいい。
階段の両側、木々が落とす影は、葉がないせいで切り絵のように梢をそのまま映し出して尖っている。夏にはおそらく、もっとふくよかな影が落ちるだろう。年齢や性別を溶かすような、まだら模様の影が、人の顔の上に落ちるんだろう。
靴に入った砂の不快感はそのまま放っておく。防砂林の向こう、手入れの行き届いた別荘や、打ち捨てられたような小屋が立ち並ぶ。人の溢れた夏を想像して楽しくなったり寂しくなったりした。
高台に上ると、どこからでも海が見える。遠く、左のほうから汽船の警笛が聞こえたせいで、静かなんだと気がつく。
南国が破裂したようなアロエの花の向こうに、半島が見えた。対岸も変わらず、生活と信仰がある。海峡には漁船と観光船とフェリーが入り乱れていた。
夕日が落ちていく。
向こうまで、船で渡れば一時間とかからないらしい。
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