火と気流
NAOYA OHKAWA
火と気流
NAOYA OHKAWA
何度も焚き火をした。なにを焼くわけでも、なにを暖めるわけでもなく、ただ余っていた薪を燃やした。iPhoneが動かなくなるくらいには寒かったけれど、火の側は汗ばむくらいに熱かった。
枝打ちで落とされたばかりのみかんの枝は、灰になる前に水分が蒸発する音がする。枯れた葉も、いらない紙も、なにかしらの音をたてて燃えていった。
なんの加減か、焚き火の熱が生んだ上昇気流にのって火の粉が舞い上がる。赤く熱を含んだまま数メートル舞い上がって、映画の上映前にふっとなめらかに照明が消えるような速度で、諦めたように、赤く燃え上がった火の粉は冷えて黒くなった。
なにをするわけでもないけれど、焚き火は変に楽しい。焚き火の終わり、赤い炭は魔の山のように見える。少し扇ぐとまた燃える。最後にはいつも燃え跡に入念に水をかけた。ちょっとした寂しさと満足感と水が、蒸発して煙になる。白く濃い煙が消える頃、妙に潔い気分になる。身ぐるみ剥がされたように、急に温度が下がった。
年の瀬が近づき、寒さが厳しくなった。機械式のカメラは、凍っているんじゃないかというくらいに冷たくなる。火を囲んでいようが、背中の寒さに耐えられなくなった。もういくつ寝るとお正月か。
火と気流
NAOYA OHKAWA