bloom / SAKURA
NAOYA OHKAWA
bloom / SAKURA
NAOYA OHKAWA
例年より、少し早く、桜が色づいたような気がする。毎年ある、ああ、散る前にゆっくり眺めたいな、という焦燥はなぜかあまりなく、蕾がふくらみはじめた頃から桜の下に立ちすくんでは、経過を眺めていた。暇だったんだろうか。
特に名所に出かけるわけではなく、町なかに咲いた桜や、出かけた時に見かけた桜を写真に撮った。朝も昼も夜も綺麗だった。やっと春がやってきたと、安堵した。
食用の梅の花と違って、桜の花は、手の届かないところに咲いていた。落ちた花びらを拾うと、手のひらを透かして、酸素より透明で軽いように思えた。桜にまつわって色々と言われる月並みなことをたくさん思う。
小高い山の上まで車を走らせて、海を眼下に見ながら桜の散るのを見ていた。帰り道、花粉や埃のついた車の窓ガラスをワイパーで拭うと、夕日に照る桜が見えた。それはあまりにも綺麗で、なにかはっとするような思いがした。晴れた日に薄く波だった湖面の反映を見るような、思考を吸い取られるのに似た気分で、目を丸くして車の後方をしばらく振り返っていた。
満開の桜はそれはそれは見事だけれど、散る花も、枯れる花びらも葉の混ざりはじめた桜も綺麗だった。言葉の世界では、汚さを認めることばかりが、ありのままだともてはやされているけど、桜の花はどこからどう見たって、凛々しく、震えるくらい綺麗だった。
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