DRIFTER / TEMPORARY ASHORE
NAOYA OHKAWA
DRIFTER / TEMPORARY ASHORE
NAOYA OHKAWA
海岸、漂流が終わった。
研究のようでもあり、瞑想のようでもある日々だった。
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焚くかがり火を灯台に。
生活の窓を灯台に。
厳しい冬に暖かい服を着た。
暖かくなってそれを脱いだ。
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曇った海岸に停めた車で音楽を聴く。音もなく雨が降っている。ワイパーの、劣化しはじめたゴムが擦れる音、弦楽器と皮の太鼓。
夕焼けの海、鳥が帰っていく。
朝焼けの海、漁船が帰ってくる。
遠雷、海鳴り、ゴロゴロと音がする。海に雷が落ちるのが見えた。あ、という声が出た。あれは電気で、灯りで、色で、エネルギー。
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民族の踊り、火と太鼓。
それらは渦を巻いて天高くのぼっていった。
ころころと転がるのは音楽と歌。
あっち東京、こっち岡山、広島、そっち秋田、むこう滋賀。
湖は凍って、溶けて、川に流れた。
水が煙り、雨が降った。
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車を降りる。海の風は、ベタベタするけれど気持ちがいい。
この白い波の立つ海の向こうには、ハワイ、ペルー、モンゴル、キューバ、ニューヨーク。
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花はいつも綺麗だった。
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バッテリーにプラグを差すと閃光。新しいものを見つけた。
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収穫の時期を終えて、果実が腐った。甘い匂い。枝に蕾。
枯れた木の種が空を飛んで、鳥が運んで、初夏、なんてあざやかな花を見た。
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研究を進めよう、実験を繰り返そう、旅を続けよう。
一時的な漂着、足が2本、ぎゅうぎゅうと泥を踏む。
DRIFTER / TEMPORARY ASHORE
NAOYA OHKAWA